私の家に来ると、
決まって「なにか、いい」と言う人がいた。
彼女は長く、
大切に扱われているとは言い難い関係の中にいる。
別に私の家で、
特別なことをするわけではない。
お茶を飲んで、話して、
普通に過ごしているだけだった。
それなのに彼女は毎回、
「ここは何か違う感じがする」と言った。
最初は、
家の雰囲気が好きなのだと思っていた。
でも、たぶん違った。
長く粗末に扱われた蓄積が
本人の標準になり、
「自分はこのくらいの存在だろう」
という感覚が、
疑われることなく内側に定着していく。
誰かに言われたわけではなくても、
自分がどう扱われているかは
少しずつ身体に残る。
その前提が存在しない場所に入ったとき、
「あれ?」
となる。
理由は言語化できなくても、
「ここは、明らかに質が違う」
と感じる。
それと同時に、
“ここにいる自分は、いつもの自分と少し違う”
そんな感覚が生まれる。
私の家が特別だったのではないと思う。
ここでは、
彼女を粗末に扱う人がいなかった。
たぶん、それだけ。
そのことに身体のほうが
先に気づいたのだと思う。
空間は、
人をどう扱うかをはっきりと示す。

