モデルとして働く妻がいる。
夫は、その妻について探偵に相談した。
不倫。
もうひとつは、5歳の娘に対する態度だった。
妻は娘に向かって
「ブスだから愛せない」
というような言葉を繰り返していたという。
育児にも積極的ではない。
夫は次第に、
妻の育児放棄を疑うようになった。
話だけ聞けば、ものすごく単純。
美人の母親が、容姿のよくない娘を嫌っている。
外見至上主義の母親。
そういう話に見える。
ところが途中から、話が変わる。
妻がモデルとして撮影してもらっていたカメラマン。
実はこの男性、
小学校、中学校時代の同級生だった。
つまり現在の彼女だけでなく、
昔の彼女も知っている。
そのカメラマンが話し合いの場で、
あることを明かした。
彼女は全顔を整形していた。
触っていない場所がないほどだという。
カメラマンはスマホに残っていた
昔の彼女の写真を見せる。
夫は何も知らなかった。
昔の妻の顔を見て固まる。
仲介人も固まる。
その後、
妻本人が話し合いの場へやって来た。
仲介人は整形そのものを否定しなかった。
整形も努力ですよ。
そういう方向から話そうとした。
ところが彼女は激しく反応する。
カメラマンにも夫にも
暴力を振るい怒鳴りつける。
その勢いがすごい。
瞬間湯沸かし器のごとく発火した。
さらに話し合いの中で、
夫不在の場面では
娘にも暴力を振るっていたことが発覚する。
夫は、
「最近ケガが多いなと思ってた」
と言う。
妻の返答。
「顔以外やから」
私はもう、クラクラきた。
この女の美醜への呪い。
私は、その場面を見ながら思った。
この人、相当傷が深い。
整形したことを知られたから怒った。
そんなもんじゃない。
自分が必死で消してきた過去を
突然大勢の前に引きずり出されたような反応。
夫も不倫相手も、顔で選んだ
そしてここで、
娘への態度まで意味が変わってくる。
彼女は夫についても、自分から話している。
顔が良かったから、自分から近づいた。
イケメンだから選んで結婚した。
不倫相手になったカメラマンについても同じ。
顔が良かった。
結局この人は、自分の顔だけではなく
男の顔まで明確に選んできた。
自分の顔は整形で変える。
夫は顔で選ぶ。
不倫相手も顔で選ぶ。
でも娘だけは選べなかった。
ここが残酷だった。
娘は母親の元の顔立ちを強く受け継いで生まれてきたという。
母親は自分の顔を変えることはできた。
でも、遺伝子までは変えられなかった。
自分が嫌だった顔。
それが娘に残った。
「その顔、昔の私」
地雷だった。
娘を嫌っていたというより、
自分の昔の顔を嫌い続けていた。
娘に向けていた言葉が、
そのまま過去の自分へ向いていたようにも見える。
これはかなりしんどい話。
顔は変えられても、遺伝子は変えられなかった。
子どもより犬の方が好きだと思っていた
元来の私は、かなりドライな性分。
学生の頃、
友人とこんな話をしていたことがある。
「たぶん私たち、自分の子どもが生まれても犬の方が好きよね」
冗談ではなく、そのときは本心だった。
ところが自分に子どもができた。
娘の新生児期には、アトピーがあった。
2歳、3歳と成長するにつれて軽くなり、
今はほとんど症状も出ていない。
でも当時の私は必死だった。
「代われるなら代わってやりたい」
そう言って泣いたこともある。
ステロイドではない治療法を探して奔走した。
学生時代に言っていた
「子どもより犬の方が好き」
あれは何だったんだ。
母親になった途端、
私の中に自分でも知らなかった感覚が出てきた。
理屈ではなく娘がつらいのが嫌だっただけ。
だから、このモデルとして働く妻を見ていて
私はかなり遠いところにいる人だと思った。
娘に向かって「ブスだから愛せない」と言う。
しかもその娘は、
自分が整形で消した昔の顔を強く受け継いでいる。
たぶん私がこの動画から目を離せなかったのは
不倫でも整形でもない。
そこだった。
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