2010年代半ば、
女性の個人起業が盛んだった頃、
「自分の強みを見つける」という言葉をよく聞いた。
私もその時代に起業した。
自分をブランド化し、専門性を見せ、実績を積み上げる。
人から見れば能力でも、
本人にとっては「ついやってしまうこと」
それを強みとして見つけ、仕事に変える時代だった。
今振り返れば、私はずいぶん重装備だった。
鎧を着て武装して出撃するように、
自分の価値を説明していた。
それでも、そこそこ戦えた。
当時見つけた「強み」は
私の全能力ではなかったけれど、
あの時代を進むには機能する装備だった。
問題は、装備には賞味期限があること。
時代が変われば、
昨日まで強みだったものが急に古く見えることがある。
もっと厄介なのは、
方法だけでなく
成功した自分まで
古くなったように感じること。
私は数年間、
更年期の中ほとんど動けなくなったあと
人生をアーカイブするために文章を書き始めた。
誰かに読んでもらうためではなかったが、
毎日書いた。
続けているうちに妙なことに気づいた。
私は美容や人生について書いているつもりで、
実際にはずっと「ものの見方」を書いていた。
人、映画、美容法、化粧品、ラグジュアリーを見る。
対象が変わっても、
やっていることは同じだった。
かつて「強み」と呼んでいたものは、
私の表層に出ていた能力だったのかもしれない。
商品を作る。
美容を教える。
生放送で実演し、商品を伝える。
それらのさらに下に、
見る、考える、選ぶ、言葉にするという習性があった。
一度それまでのやり方から離れた人は、
新しい強みを無理に探さなくて いいのかもしれない。
過去の成功から鎧を一枚ずつ外したとき、
昔から使っていたのに
名前をつけていなかった能力が残ることがある。
成功体験は財産になる。
同時に、ときどき更新を拒む鎧にもなる。
一度成功した方法が効かなくなったとき、
昔の自分を再現するのか。
それとも、
成功のさらに下にあった自分を発掘するのか。
私は長いあいだ、
鎧のほうを自分だと思っていた。
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