私は一度、シュワちゃんと映画館でお別れしている。
『ターミネーター2』の最後。
T-800が溶鉱炉へ沈んでいく。
親指を立てたまま、火の中へ消えていくシュワちゃん。
若かった私は、
「シュワちゃんが人間のために犠牲を払ったのに
こんな理不尽な別れってある?」
と映画館で泣いた。
今思い返すと可笑しい。
でも、あの時は本気で泣いた。
ああ、シュワちゃん、さよなら・・・
私の中では完全にお別れだった。
それが後年、
え。知事?
何があった?となる。
2003年、アーノルド・シュワルツェネッガーは
カリフォルニア州知事になった。
筋肉の人は、筋肉だけの人ではなかった
シュワちゃんは、もともとボディビルダーだった。
20歳でミスター・ユニバース。
その後アメリカへ渡り、ボディビルの世界で成功する。
そこから映画へ行く。
『コナン・ザ・グレート』がヒットし、
1984年には『ターミネーター』
世界中が、あの身体と顔を覚えた。
普通なら、ここで充分すぎる。
筋肉を極め、その筋肉ごと映画へ持っていき、
世界的スターになった。
私ならもう寝る。
ところがシュワちゃんは
「世界的アクションスター」という
巨大な成功の中に居座らず
政治へ行った。
これが私は妙に気になる。
成功した自分を、完成形にしなかった
シュワちゃんには、シュワちゃんでいてほしい。
筋肉があって、強くて、銃が似合う。
世界中が知っている「シュワちゃん」は、
もう完成していた。
それなのに知事になった。
しかも俳優だった自分を消して政治家になったわけではない。
シュワちゃんのまま知事になった。
私は、ここが好きなのかもしれない。
ボディビルダーだった過去も
映画スターだった過去も
そのまま持っている。
ハロワにも行かず、
前の経験値を持ったまま転職している。
レベル1からやり直していない。
鎧を脱いだあと
私は最近、
一度成功した方法が
自分ごと時代遅れになったとき
人はどうするのかを考えていた。
昔の成功まで否定する必要はない。
あの頃には、あの頃の装備が使えた。
でも、その装備が自分そのものになると
厄介なんだろうと思う。
シュワちゃんは筋肉を捨てていない。
俳優も捨てていない。
知事を退任したあと、また映画にも戻っている。
だから「鎧を脱ぐ」というのは、
一度成功したからといって
ずっと同じ肩書きでいる必要もない。
脱いだ鎧は置いておけばいい。
また着てもいい。
シュワちゃんを見ていると、
そのくらいでいい気がする。
あの映画館で私が泣きながら見送った男は、
終わっていなかった。
「I’ll be back👍🏻🔥」
ほんとに戻ってきた。
ただし知事になって。
そこまでの「I’ll be back」は聞いてない。笑
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