" /> デンゼル・ワシントンという、感情の預け先 | 美容家ルネ|50代からの美意識
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デンゼル・ワシントンという、感情の預け先

✧Character Studies

デンゼル・ワシントンが好きで、
彼の作品は、ほぼ必ず観る。

理由は単純。

正直なところ、
顔と演技が好きで、
それで完結してしまう感じがする。

けど、
長く観ていると、
好みだけでは説明できない。

まず、
私生活を売らないように見える。

言葉を慎重に扱い、
俳優としての立ち位置を
意図的に軽くしない。

以前 オスカー賞、

授賞式の異様な空気の中で、
感情的になったウィル・スミスを
デンゼル・ワシントンが
なだめていた場面があった。

その後に語られた、

“At your highest moment, be careful.
That’s when the devil comes for you.”

最も高く昇った瞬間こそ気をつけろ。悪魔はその時に来る。

という、あの時の彼の助言も
名言として残っている。

頂点に立つ人間ほど、
一瞬で崩れる危うさを知っている。

長く業界に残る人特有の
緊張感と自己管理が、
あの短い言葉から漏れていた。

そんな姿勢が、
役柄にそのまま滲む。

彼は、
思想的な俳優だと思う。

それも、
声高に主張するのではなく、
視線や間、
沈黙の置き方で。

たとえば
『トレーニング デイ』

同一人物とは思えないほど、
顔つきが変わる。

目線は濁り、
空気が荒れ、
ムードそのものが素性の悪さを帯びる。

一方で、
『ローマンという男』では、
真面目で、不器用で、
どこか生き下手な人物を演じる。

彼本来の性格が
演技の奥に透けて、

もうローマンにしか見えない。

単純な善悪ではなく、
社会の歪みに
個人がどう摩耗していくかを
淡々と演じ続ける。

すべての作品を挙げたいけど、

今日はやめておく。

世界共通である、

庶民に苦痛を強いる巨悪の組織。

名前を変え、顔を変え、
正義を建前に、痛みは民に落とす闇。

この現実社会の腐敗に辟易し、
感情の委ね先に困る日もある。

そういうとき、
私は
『イコライザーシリーズ』に逃避する。

年齢を重ねたデンゼルが、
巨大な悪の組織を
たったひとりで、
次々と確実に崩していく。

内心、

よっしゃー!

やったれー!である。

派手な正義ではない。
感情を煽る救済でもない。

理知的な戦法で、
こちらの報われない感覚だけを
そっと回収してくれる。

彼の作品を観終えたあと、
何かが解決するわけではない。

ただ、
世界を見限らずに済む程度には、
呼吸が整う。

その距離感が、
私は好きなのだと思う。

気づけば昨夜も
『イコライザー・ファイナル』に戻っていた。

Cinema & Drama Aesthetics

― Lune

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