秋、失った時間を紡ぐために旅へ出る。
慌ただしく過ぎた日々の中で、
置き去りにしてきたものがあった。
仕事に追われ、
次の予定ばかり考えていた頃。
景色が変わっても立ち止まらず、
季節が巡っても気づかないまま歩いていた。
過去、旅には何度も出た。
けれど、
あの頃の私は場所を見ていたのではなく、
予定をこなしていただけのかもしれない。
美しいホテルに泊まり、
知らない街を歩き、
窓の外に広がる景色に触れても、
心はいつも次の場所へ向かっていた。
立ち止まって景色を見る時間を忘れていた。
秋になったら奈良を離れ、
かつて通り過ぎた場所へ戻ってみようと思う。
見逃した景色を見直し
感じる前に通り過ぎた時間に触れ直す。
新しい何かを探す旅ではない。
若かった自分を懐かしむためでもない。
過去へ戻るためでもない。
あの頃には受け取れなかったものを
今の自分で受け取りに行く。
失った時間は戻らない。
それでも、
置き去りにした感覚を拾い直す
過去を回収する旅。
― きょうは、過去を拾い直す旅を選ぶ ―
