50代になってから、
私はずっと正解のメイクを探していた。
新しいコスメが出るたび試すわけではなく
SNSで流行るメイクを追いかけるわけでもない。
むしろ逆。
年齢を重ねるほど、
新しく手に入れるものより
失いたくないものの方がはっきりしてきた。
ここ7年、変わらないことは
日焼け止めクリームやベースメイクの練り物を
塗りたくない感覚。
ファンデーションについては
40歳には
すっかり塗らなくなっていた。
肌を覆い隠すより、
素肌感を残したい。
気づけば7年ほど、
ベースメイクは粉体中心になっていた。
世間には正解がたくさんある、
ツヤ肌
水光肌
マイナス10歳メイク
50代向け若見えメイク。
けど私は、どれにも興味がなかった。
なぜか?
私が守りたかったのは、
若さではなかったから。
失いたくないのは、
世界を見続ける力。
正確に言うと、眼の生命力。
目を大きく見せたいわけではなく
華やかに見せたいわけでもない。
「この人は見ている」
そんな気配を失いたくなかった。
年齢を重ねると、眼光は少しずつ変わる。
体力も視力も変わる。
けど、人を見る力や
物事を見抜く力まで失う必要はない。
むしろ、そこは育っていく部分。
だから私は、
今でもアイメイクだけは揺れる。
シャドウを強くする日。
ラインを引かない日。
マスカラを丁寧に塗る日。
この揺らぎは流行ではない。
その日の自分が、
どれくらい意志を前に出したいかの調整。
振り返ると、
私は美容そのものより
観察する時間が増えていた。
最近は画像を見ても、
「この人は何を見ている?」と。
顔立ちより先に、
その眼の奥にある意志を見てしまう。
美容家として過ごした時間の先で、
私は少しずつ
観察者になっていたのかもしれない。
そんな私の今の
メイク基準は案外シンプル。
若く見えることではなく、
眼の生命力を削らないこと。
そこだけは譲らない。
肌も 輪郭も 流行も 変わる。
けど私は、
まだ 見ている人 でいたい。
歳月を重ねても
世界との距離が変わっても
私が探していたメイクの正解は、
コスメ売り場にはない。
—— きょうは、若さより意志を選ぶ。——

