もう二度と書けない。
そう思いながら、書きあげた。
ドラマ HOMELAND の
クインの人生について、
言葉にするには重すぎた感情。
国家に消費された人の物語。
彼は、
アメリカ国家のために
自分の人生と命を差し出し、
それでも正義を選び続けた人物だった。
すべてを一人で引き受けるという判断。
誰にも委ねられない責任。
報われなさを承知の上で、
引き返さない姿勢。
シーズン6最終話から、
9年。
心の奥で沈まなかったものがある。
原作が持つイスラエル目線の緊張感。
アメリカという国が抱える
国際情勢の現実が、
あまりにも生々しく描かれていたこと。
正義と国家、
個人の人生が噛み合わないまま
消費されていく感覚。
そこに、
寂しさと郷愁、
単純には整理できない感情が
重なって残り続けていた。
今回の一編は、
9年間溜め込んできたマグマを
すべて本文に収めるための時間だった。
感情を整理するという行為は、
精神も体力も消耗する。
触れなくてもよかった景色まで
思い出してしまうし、
しばらく他のものが
書けなくなる。
それでも、
いまの自分だから
最後まで書き切れた。
これは、
分かってもらうための文章ではない。
彼について抱えていた感情は、
すべて、
あの一編に置いてきた。
書き終えて、
ふと、
マックスの人生にも
本当は触れたかったと
思い出した。
けど今日は、
そこまでは行けない。
この記事は、
ひとりで正義を貫き通した人物に
9年越しで
区切りをつけるための記録。
もう二度と、
同じ温度では
書けない。

