朝の白い光をたよりに窓を開けると、
ひやりとした冷たい空気が
部屋をゆっくり巡りはじめる。
冬の風は、昔から好き。
肌に触れた瞬間、
余分なものがそぎ落とされ、
内側の美意識が静かに目覚めていく。
その風に、お線香の香りが重なると、
まるで “今日の私を包んでくれる” ように感じる。
冷たい風とお線香のやわらかな香り──
この組み合わせが、
朝いちばんの私を整えてくれる。
お仏壇はないけど、
好みのトレイに切子のおちょこを置き、
そっとお水を入れ替える。
傍らに細いお線香を添えて、
過去の愛しいペットたち、
そしてご先祖に
心の中で「おはよう。今日も元気やで」と
小さく声をかける。
たった数分の、私だけの儀式。
部屋に漂う白い光と香りの余白が、
50代の暮らしに “静かな品” を運んでくれる。
南部鉄の茶瓶で沸かしたお白湯を飲む前のこの時間は、
美意識のスイッチが静かに入る瞬間。
どれだけ忙しい日でも、
この一手間があるだけで心の流れが整い、
一日の選択がやさしく、上質になる。

